環境情報学部の武本行正教授は平成25年12月12日から中国を訪問し、上海市や南京市周辺の大気環境を視察しました。この訪問は南京大・朱教授の要請で実現したものです。この時期、上海はまだ暖かで、例年、揚子江沿岸の大気汚染がひどいとのことです。南京市の視程は1~2kmでした。朱教授によれば、先週はもっとひどかったそうです。東北の瀋陽など諸都市や華北の北京・天津・石家荘の汚染はよく知られていますが、上海周辺も広範囲に内陸側に汚染が広がっており、揚子江沿岸では視界が数百mで、対岸は見えないほどでした。
はじめに、南京大学の環境科学研究所で朱教授や院生と意見交換し、現在彼らが調査している靖江市(南京の東南方の江蘇省泰州市に位置する県級市)について説明を受けました。翌日、朱教授らと靖江市の環境保護局を訪問し、所員と大気汚染の状況や、日本と四日市の汚染克服の経験等を意見交換し、対策を話し合いました。
やはり、工場の排煙、石炭燃焼、自動車の排ガス、稲わらの野焼き、広範囲の越境汚染等、課題は山積しているようでした。41の大工場には集塵機や一部脱硫装置等が設置されているものの、中小規模の煙源には対策が必要で、資金が必要とのこと。また政策実現の強制力も、中央政府や省政府とともに実行しなければ不可能とのことでした。なお、各都市の人口は南京市が1千万、上海市が3千万弱、靖江市は70万です。
武本教授は感想として「対策の必要性を全員認識しており、方法も分かっているが、まだまだ実現までには時間がかかる。また、水質汚濁や土壌汚染の問題もあり、この広範囲の国土では解決までに相当の困難がある。日本は燃料が石炭から石油や天然ガスに切り替えられたが、中国は石炭が主要なエネルギー源で変えられない。」と話しました。