インドネシアの国内会議で武本教授が招待講演を行いました。

 武本行正教授が2015年11月5~6日にジャカルタで開催されたインドネシアの国内学会で招待講演を行いました。会議名はインドネシア語で「PENANGANAN DAN PEMBELAJARAN KABUT ASAP DI INDONESIA BERBAGAI ASPEK PENYELESAIANNYA」、日本語に訳すと「インドネシアにおける『煙害』の制御と調査 ─解決のための多様な側面─」になります。
 
 泥炭地火災はスマトラ島やカリマンタン島を覆い、10月21日までに総計140万ヘクタールの泥炭地で火災が発生しました(El Sintaラジオ放送より)。PM(浮遊粒子状物質)汚染が酷い時には空港も閉鎖になる事態が多発しています。乾季は7月から始まりましたが11月には雨季に変わり、現在は収束に向かっています。
 
 健康被害としては、今年だけでも10月24日までに10人が煙害によって死亡し、中ジャワで5万人以上が、ジャンビ州では約13万人が上部気道感染症を患いました。ぜん息を含む呼吸器系疾患の患者は、リアウ州、南スマトラ、西カリマンタンなどの6州で合計で50万人を超え(Tribun Pekanbaru紙、2015年10月25日)、煙害下にある住民の数は10月末で4300万人に達したと言われています。
 
 健康被害の原因物質としては、泥炭地上部の木材破片、下部の硫酸を含む酸性土壌からの火災で生じるPM、SOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)、EC(元素状炭素)やCO(一酸化炭素)などが疑われています。
 
 これらの被害地域の小中高校では2ヶ月も休校に近い状態となっている所もあり、例えば週に2回学校に行き、1時間だけ学校にいて、宿題を貰って帰って来るということが行われ、子供たちが家の外に出ないように配慮されています。(2015年10月25日リアウ州プカンバル住民インタビューより)
 
 現地の対策としては、リアウ州だけで50の避難所が置かれ、空気清浄機を設置し、また酸素が吸入できるようになり、また、病院や保健センターは24時間診察を続けていると報道されています(Riau Pos紙 2015年10月25日)。
  
 武本教授は四日市公害の硫黄酸化物大気拡散や、最近ではウランバートル市(モンゴル)のPM等の複合汚染の研究を進めてきました。講演では、四日市公害とぜん息問題の発生から収束までの経緯と歴史を説明し、一度ぜん息になると、死ぬまで完治しないと指摘しました。インドネシアで年々酷くなる森林火災で、このまま発生源対策を取らないと、健康被害とその補償費用が莫大な額になると警告しました。
 

ジャカルタ市内の朝の通勤ラッシュの状況と大気汚染(視程は1kmほど)


2日目の参加者と記念撮影(中央はNGO代表女性、その右が京大の水野教授、左が武本教授)


武本教授の講演の様子

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