1次産業のスマート化(情報技術やAIを活用した効率化)が世界的に進められていますが、三重県水産研究所は真珠養殖のスマート化に向けた研究を行っています。そのひとつとして、同研究所は英虞湾の水質予測システムの構築を目指して来ました。真珠養殖では適正水温でアコヤ貝を養殖することが重要で、水温に応じて貝を移動したりします。また、貝の餌となる植物プランクトンの量や、酸素濃度(特に低酸素を避ける)なども養殖には重要な情報です。
今回、試験公開を始めた水質予測システムは、英虞湾全湾の水温、塩分、クロロフィル(植物プランクトンの量)、溶存酸素を予測するもので、千葉研究室は(株)ハイドロシステム開発と供に、本システムの開発に協力しました。三真協の「三重県真珠養殖関連漁場水温モニタリングシステム」のページに試験公開のページ(PC用、携帯用)へのリンクがありますので、是非、ご覧ください。
英虞湾の水質予測システムは気象庁の数値予報データ(GPV)と、同湾に設置された3か所の観測ブイの1時間毎の水温塩分観測データと、三重県水産研究所の1週間毎の定期調査データを元に、予測日から11日後までの水質を予測します。
2003年から2007年までに実施された三重県地域結集型共同研究事業でも、水質予測モデルの開発を四日市大学が担当しましたが、大型モデルを用いたために調整が困難で、予測精度は十分とは言えませんでした。
今回の水質予測モデルは英虞湾を水平10ボックス、鉛直方向6層に区分した簡易なもので、空間解像度は低いものの、モデルの調整に十分な時間を掛けることが出来ました。2020年2月から現在までの水質予測を行い、観測値と比較しましたが、水温に関しては±1℃程度の誤差範囲で予測の出来ることが分かりました。なお、気象庁の数値予報データにもかなりの誤差があり、水温の予測誤差にはその影響が含まれています。
人工知能(Deep Learning System)を用いた水試予測システムの開発も進めており、近日中に上記の試験公開のページにデータを公表する予定です。