富士山東南麓のブナ植林地と苗場と柿田川湧水を見学(千葉)

「柿田川・東富士の地下水を守る連絡会」は静岡県東部の自然保護9団体で設立されたもので、2023年度日本水大賞の農林水産大臣賞を受賞され、その活動が高く評価されました。この日本水大賞の授賞式に同席し、ブナ苗の育成と植樹に成功されている事例を拝見し、連絡会に見学をお願いしたところ、快く受け入れていただき、2023年7月25日(火)に実現しました。

千葉研究室で鈴鹿山系のブナ林の研究を行っている水野君とレグミ君(4年生)も参加し、連絡会にご準備いただいた車で、標高約1100mの浅木塚植林地と、標高約100mの苗場と、柿田川湧水を見学させていただきました。車中や現地で詳しいお話しを伺うことも出来て、大変参考になりました。

1996年の台風17号で富士山東南麓の浅木塚付近の国有林に大規模な風倒木が発生し、国の呼びかけに応ずる形で連絡会による植林活動は開始しました。それ以来の四半世紀に亘り、苗木の育成と植林活動を継続され、植樹総本数は24,861本に昇り、その中の16,461本が落葉広葉樹で、主な樹種はブナ、ミズナラ、ヒメシャラ、ヤマボウシ、イタヤカエデ、クリなどです。

当初は背の低い稚樹をそのまま植えて、動物の食害に会い、その後、生長点にシカなどの口が届かない高さまでに苗を育ててから植樹する方式に変更したり、パッチディフェンス(一辺が10m程度の小さな方形の敷地を2m程度の高さのネットで囲う)を取り入れることで、安定に育成ができるようになったとのことでした。

植林地には背丈くらいのブナ稚樹から、樹齢30年程度の立派なブナの若木まで、多様なサイズのブナが無数にあり、既に殻斗を実らせる個体もあり、朝明渓谷では見ることのできないその姿に驚き、感動しました。もちろん、ブナ以外にも多彩な落葉広葉樹が育っていました。1996年の台風後には裸地のようになっていた場所(写真で拝見)が、若い樹木群で見事に覆われていました。

その後、富士の裾野を車でひたすら下り、苗場を見学しました。苗場もパッチディフェンスで区切られ、各パッチには異なる樹齢の稚樹が育ち、大苗に育つと植樹地に輸送するというローテーション・システムが確立されていました。膝下くらいから3m程度の樹高までのブナが、すくすくと育っていました。ただし、苗場も下草が伸び放題になっており、管理が大変だというお話しも伺いました。

その後、柿田川湧水地を訪問し、湧水地の歴史、トラスト運動、貴重な動植物、外来種問題、子供向けの自然環境教育などについて、詳しいお話を伺いました。富士山東南麓の植林地帯が水源涵養林となり、そこから地下に潜り込んだ水が、長い期間を経て柿田川湧水地に湧き出しており、柿田川の保護活動と植林活動が一体となって、貴重な水資源が守られているとのお話しでした。

無理なお願いであるにも関わらず、平日の貴重なお時間を割いていただき、ご案内いただいた「柿田川・東富士の地下水を守る連絡会」の皆様に深く感謝申し上げます。教えていただいた貴重な情報を、今後の我々の活動に生かして参ります。本当にありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください