モンゴル・ウランバートル市の大気汚染調査(武本・粟屋)

40年前には、この四日市市は大気汚染に悩まされていました。「四日市喘息」です。原因は硫黄酸化物による大気汚染でした。認定患者も一時1000名を上回り、今も多くの方が苦しめられています。さて、国外に目を転じますと、近年、モンゴル国首都ウランバートル市では、広範囲の周辺の遊牧地域からの人の流入が顕著となり、市の人口が120万人へと約2倍に急増しました。その結果、市北側と西側の周辺丘陵地にゲル集落(遊牧民の移動式テント形住居)が拡大し、戸別に暖をとるのでその石炭燃焼による大気汚染が深刻化しています。ゲル地区では電気は供給されるがやはり木や石炭をストーブで燃やして暖を取ることから、その黒煙が市内の大気汚染の直接的な原因となっています。冬季においては、市域は盆地のうえ上空で形成される大気逆転層によっても拡散が滞留し、火力発電所の排煙や自動車の排ガスなどと共に複合的な大気汚染(煤じんや粉じん(PMという), 硫黄酸化物,窒素酸化物など)をもたらし、住民の健康に深刻な被害を及ぼしています。
冬季調査を2012年3月10日に実施し、粒子状の煤じんの測定に粉塵計として、光散乱式デジタル粉塵計を用いました。測定地点は、図にある6ヶ所です。図の中心部のスフバートル広場は市の議事堂を示すものとして加えたもので、測定はしていません。なお、WHO(世界保健機関)では、世界の首都ではウランバートル市の特にゲル地区を「世界最悪のPM汚染状況だ」と述べています。
測定の結果は、やはり昼と夜間では異なり、夕方からのゲル地区での煮炊きや暖房用の石炭燃焼による東部・北部・西部の汚染が顕著でした。これらのPM値の最高値はバヤン地区での544μg/m3でした。モンゴルの環境基準の5倍も汚染(PM10で1日平均値が100μg/m3)されています。なお夜/昼の比は7~8倍から2~3倍と地区によって異なるが、ゲル地区では高くなり、夜間の12時ごろが最も高いのです。なお、1~2月はこの数倍も汚染が酷かった(2000μg/m3以上)と、現地のモンゴルの方々は述べています。

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