数学史京都セミナー(第84回)に参加しました(小川束)

 数学史京都セミナーは上野健爾先生が京都大学にいらっしゃる間は京都大学で開催していましたが,ご定年を迎えられてからは同志社大学の林隆夫先生にお世話をいただき,同志社大学で開催しています.早いものですでに84回を数えました.

 最近はずっと,マテオ・リッチ(Matto Ricci)が「口授」したクラヴィウス(Clavius)の『実用算術概論』(Epitome Arithmeticae Practicae)と,李之藻がそれを「筆受」した『同文算指』との比較研究を進めています.

 まもなくその成果を公開できそうです.もっとも刊行してくださる出版社などはなさそうなので,DVDで販売しようとか,関孝和数学研究所からダウンロードできるようにしようか,とかいろいろな案が出ています.

 中国でも最近,ラテン語と中国語の比較検討の機運が高まって来ているようで,上海交通大学の紀志剛先生のところでもわれわれと同様のことを試みようとしているようです.思わぬところで競争になっていて驚きました.

 マテオ・リッチに関しては平川祐弘『マッテオ・リッチ伝』1,2,3(平凡社・東洋文庫,1969 ,1997,1997)が名著だと思いますが,数学のことはほとんど書かれていません.最近では『同文算指』に関して安大玉『明末西洋科学東伝史』(知泉書館,2007)が一章をさいて記述しています.

 ところで,わたしは「これを機会に!」と思いラテン語を勉強しました.しかし歳のせいかすぐに単語や活用形を忘れてしまい,辞書で同じ単語を何度も引いてしまいます.3月に上海の交通大学を訪れたとき,紀先生のところの学生が「ラテン語の文法の勉強は1週間で終わり,大変だった」と言っていました.わたしはそんな短期間ではとてもラテン語の活用形を習得することはできませんが,語学の才能がある人には案外それでもラテン語が読めるようになるのでしょう.うらやましい限りです.

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