伊勢湾の海底堆積物に含まれるマイクロプラスチックの調査を進めています。その過程で、光学顕微鏡だと半透明に見える円板状や球状の物体を多数発見し、マイクロプラスチックなのかを調べています。直径は50から200ミクロン程度です。物体の同定には、(株)東ソー分析センターと四日市大学生物学研究所のお力を借りています。
今後、論文発表するかもしれないので、詳しい情報は掲載しませんが、円板状の物体をひとつだけ紹介します。泥中にかなりの頻度で見つかるこの物体を光学顕微鏡で見ると、半透明の薄い円板で、ほぼ真円の形状です。薄いプラスチック片のようにも見えます(下図の左上)。小さなソフトコンタクトレンズのようです。
東ソー分析センターに赤外線分析(FT-IR)、元素分析、電子顕微鏡分析などを行っていただいたところ、プラスチックではなく植物プランクトンの珪藻ではないかという話になりました。下図の右上・左下・右下は四日市大学の電子顕微鏡で試料を撮影したものです。この画像を生物学研究所の田中正明元教授と小川束教授にお見せしたところ、珪藻の円心目であるCoscinodiscus janischiiではないかとの結論になりました。枯れ死した珪藻の殻(ケイ素が主体)が海底に累々と埋もれているのを見つけたというわけです。
発見された多数の円板状物体には、円心目の複数種が含まれているようです。また、球状物体についても調べていますが、こちらは植物プランクトンではなく、人工的な物体だと分かってきました。これらについては、引き続き調査を進めています。