ブナ林観察会を実施(千葉)

2022年5月3日(火、祝)に鈴鹿山系朝明渓谷源流部のブナ林の観察会を行いました。同地のブナ林については、2011年から2013年にかけて毎木調査を実施し、3362本のブナ個体を確認し、胸高直径や位置情報をデータベース化し、標高別個体数、個体密度分布などを分析して、2本の論文を作成しました。

今回の観察会は、その調査から約10年が経過し、ブナ林の現状を把握するとともに、今後の保全活動を学生を交えて進めてゆくために実施しました。観察会には四日市大学自然環境研究会代表の保黒様にご同行いただき、千葉研究室の3年生5名と4年生1名と私(千葉)が参加しました。

当日は好天に恵まれ、清々しい空気の中で登山し、ブナ清水やその上部に広がるブナの密生地で観察を行いました。昨年はブナの実が沢山ついた(保黒様)とのことで、密生地の地面にはブナの実生が沢山芽を出していました。但し、今年の実生苗は沢山見つかりましたが、数年経過した苗はほとんど見つからず、芽生えても育っていない可能性が推測されました。

三重県の許可が降りたら、実生の保護等の活動を始める予定にしています。

朝明渓谷の望山荘から出発。かつて酷いがけ崩れがあり、山肌が露出し、我々も手伝って植林した斜面にアカマツの若木が見事に育っていた。植えた樹木はあまり育たず、自然に増えたアカマツが斜面を覆い、求めていた斜面の安定化を果たしているようだった。人間の無力さと自然の自己復元力を感じた。
標高600m付近のシロヤシオは開花が始まっていた。渓谷全体で開花するのは、もう少し時間がかかりそうだ。
標高650m付近のイワカガミも開花していた。朝明渓谷の旧千草街道を彩る可憐な花だ。
この地のブナの最下限は標高730mである。そこまで登り、保黒様からブナ林が始まることや、シイ・カシなどの暖温帯林との境界なので、樹木を良く見るようにと説明があった。
標高700m~900mあたりでは、コバノミツバツツジが登山道に色どりを添えていた。
ブナ清水に到着し、学生たちは湧き出る清涼な水で喉を潤した。
最長老ブナ(推定樹齢200年)で記念撮影
ど根性ブナ(我々のつけたニックネーム)でお決まりの記念撮影。当地のブナ林は、強い根茎で花崗岩質の斜面を安定化させている。その象徴となる個体である。今後、地球温暖化が進行し、当地のブナ林が衰退すると、朝明川源流部の斜面が不安定となり、土砂崩れや土石流の発生に繋がる可能性もある。そのような防災面からも、ブナ林の保全は重要と考えられる。
ブナの高密度地帯(標高1000m)で保黒様からブナ林の群落構造、生息する生物の話などを伺った。
ブナの高密度地帯には、ブナの実生が沢山、芽を出していた。元気に育てよと応援したくなった。

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