四日市大学環境情報学部



後藤朱実さんのカンボジア訪問記(その2)


環境情報学部4年次生(社会人学生)の後藤朱実さんが卒業研究のためにカンボジアを訪問しました。その報告の第2回目です。

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この国のひとたちの朝のスタートはかなり早い。これは、おそらくアジアと呼ばれ、年平均気温が比較的高い国々の特徴ではなかろうか。乾季の時は日の出時間が早いこともあって、夜明けと同時に朝早くから人々は動き出す。あちこちの街角で市が立ち、通りに面した民家の軒先では、朝ごはんを提供する食堂や雑貨やさんが開いている。雨期のこの時期は日の出が遅いため、そのようなお店も少し遅い気もするが、それでも6時過ぎには、バイクや車、行き交う人々の賑やかな声が飛び交っている。学校も7時から午前の部が始まるので、朝早くから制服を着た子どもたちの姿を見かける。
 
最初の宿泊地であるコンポントムは国道の通過点ではあるが小さな街なので宿泊設備も数少ない。宿泊した宿は国道沿いに面した便利な場所であったため、通り沿いのお店は夜遅くまで賑やかだった。そして、早い時間から自転車の荷台に大量の野菜を積んだ人や、どうやってここまで積むことが出来るのか感心するくらいの荷物を積み上げたバイクも早くから行き交っていた。
 
そんな宿泊先のシャワーは、覚悟はしていたが、やっぱり水シャワーだった。しかし、これも慣れだ。ここにいると、以外にも平気になってくる。シャワーやトイレがあるだけでもましと思えるし、水が出るだけでも贅沢なことと思えるようになる。飲み水だけはそうは行かないから、日本の水事情のありがたさに感謝だ。
 
今まで生活の上であって当たり前のことがたくさんある、それに気づいてなかったことに今さらながら気がつかされる。当たり前でない世界があるということに、いろんな意味でもっと早く気がつくべきだったと痛感する。例え物質的に恵まれていなくても人は生きていける。それしかなく選択肢のない状況のなかでさえ、生きていこうとする力を、この国の人たちから教えられた。
 
世界遺産で有名なアンコール・ワットやアンコール・トムという大遺跡群は、カンボジアの北部に位置するシェムリ・アップという街にある。それはアジア最大の湖であるトンレサップ湖の上部に面していて、この国最大の観光の街である。
 
そのシェムリ・アップに向かう途中、トンレサップ湖で水上生活をしている人々の村、(Floating Village)に立ち寄った。そして、そこに行くまでの道中で強烈な雨季を体感した。国道から一本入ると、道路はまるで川状態だった。車は水上を走るボートのように進んだが、両サイドにある水田は池のようであった。そこでは人々が釣りをしたり、子どもたちが泳いでいた。ドライバーは笑いながら「Washing Car!」と叫んでいた。
 
Floating Villageに到着するやいなや、観光船(ごく小さな手漕ぎの舟にエンジンをつけたくらいの船)に乗らないかと誘ってきた。川を上ってトンレサップ湖に行き、3時間で20ドルだという。乾季時は水量が少ないため前回は見ただけで船に乗らなかったので、今回は行くことにした。
 
カンボジアでは全ての遺跡や博物館などの入場料は外国人のみである。カンボジアの人は無料である。それは観光船も同じで、ドライバーは一緒に来てもどこでも無料である。そのおかげで、現地の人との通訳もしてもらえるから助かる。
 
少し余談になるが、この国に来てつくづく思うのは、この国では生活するため必要に迫られ、外国語を覚え話す人たちに度々出くわす。それでも、英語の話せるドライバーの確保はなかなか難しいらしい。ラッキーなことに、前回から、私はJICAや日本の企業関係のドライバーをしている人を紹介してもらうことが出来たので、今回もそのドライバーを指名した。
 
7日間の旅をこのドライバーに委ねるわけだから、意思の疎通がスムーズに出来るということは、かなり大きなことである。ゆっくり英語を話してくれるのと、日本人の行きたいところを良く知っているようで言えば直ぐに応じてくれる。私は、前回も水田や貯水池が見たかったので、そういう場所を重点的に行ってもらった。乾季と雨季の違いを見たいということで、前回と同じ場所に行きたかったが、以前に行った所をちゃんと覚えてくれていた。
 
地名の分からないところは、写真を見せるとすぐに思い出してくれた。最初、独特の発音にずいぶん戸惑ったが、今回は直ぐになれた。英語力など全くない私であるが、やはり慣れと、必要に迫られることで、少しずつ進歩できるものだと痛感した。頭の中で考えているより、まず飛び込めば後は何とかなる。
 
船は水上で生活する人たちの中をゆっくりとトンレサップ湖に向かって進んだ。乾季の時は道として歩けるところも今は水没している。ドライバーがそのように話してくれた。水上生活の風景は簡単に説明すると、増水した大きな川のなかに、高床式の家が立ち並び、たくさんの集落が出来、いくつもの集落が集まって一つの街となっている。
 
生活に必要なものはその中で賄うことが出来るようだ。学校、警察、診療所、寺院などもあり、食料品はもちろんのこと、衣類や床屋さんなども見かけた。鍛冶屋さんでは火花を散らして修理をしていた。また今や生活に欠かせない携帯の店やガソリンも売っていた。頻繁に手漕ぎの子船で物売りが行き交い、常連のお客さんのところに売りに行く姿もよくみかけた。必要なら携帯電話で呼べばいいから、かなり便利になったのではないだろうか。
 
このトンレサップ湖はアジア最大の湖であり、「伸縮する湖」と言われ、雨季時の面積は乾季時の三倍以上にまで膨れ上がるという。魚介類が豊富で、世界有数の淡水魚の漁場である。ワニもいるらしい。最近は減ってきてるとのことだったが。漁を終えた子船が、大量の魚類を市場向かって運ぶ光景も多く見られた。しかし、近年において、水質汚染や乱獲による問題は相当深刻なものとなっている。
 
川からトンレサップ湖に入ると、その雄大な景色に海のような錯覚を覚えた。この広大な湖が100万人以上の人たちの居住地となり、人びとの貴重なタンパク源となっている。また犬を飼っている家も多くあったが、ふと気が付くと一匹の犬が泳いでいた。それは散歩のようであった。どこに行くのかと思ってじっと見ていたら、ちゃんとわが家にたどり着いた。ドライバーと一緒に拍手した。犬とて、どのような環境の中でもちゃんと適応していくものなのだと感心した。
 
あちこちに食堂もたくさんあって、三々五々集まって楽しそうに歓談していた。そんな中にも、ちゃんと観光客相手のレストランもある。そこで食べた茹でエビは、ここで獲ったものだ。ウェイトレスの女の子はこの船に住んでいると言うことだったが、乾季になると陸地に移動をしていくという。まさに動くレストランだ。とても明るく、飾り気のない笑顔がかわいくて、おしゃべりで気さくな24歳の女性だった。
 
ここで暮らす人々や子どもたちを見ていると、私たちの目から見れば、生活環境はかなり良くないが、そういう中において、一日一日を淡々と楽しみながら過ごしているように見えてくる。そしてやっぱり強いと思った。物質的に恵まれた環境の中でどっぷりつかっているものの、第三者的な見方なのかもしれない。ただ見てるだけで眺めているだけであり、そこに住むのとは全く違う。しかし、一時の通過者ではあるが、それは他のFloating Villageや行く先々で同様に感じたことである。

その3へ続く

 


後藤朱実さんのカンボジア訪問記(その2)」 に1件のコメント

  1. 千葉 賢 より:

    写真を見ながら文書を読むと、後藤さんがどのような旅をされたのかよくわかります。このようなのどかな国が、かつては戦禍の中にあったのですね。訪れた地域では地雷の撤去はかなり進んでいましたか。

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